緑のネットワーク

街を包む緑のネット
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キーワードは緑のネットワーク
参考となるカールスルーエ市の試み
(C) Karlsruhe Gartenbauamt
カールスルーエ市中心部
緑のとても多いことがわかります。上のほうにカールスルーエ城の森、下のほうに地下水の保護林が広がる。

キーワードは緑のネットワーク
公園局の方にビオトープを案内していただいた時、くり返し出てきた言葉が『緑のネットワーク』でした。緑地はお互いに離れて孤立していてはビオトープとしての価値が半減してしまいます。他とのつながりがないと動植物の移動ができず、生物の生きる場所として有効に働かないからです。

緑のネットワークの中心になるのは大きな森や公園、墓地などです。それと中くらいの大きさの緑地を網の目のようにつなぐことによって、ビオトープは有機的な働きをします。帯状の緑地帯クラインガルテン、街の中の小さな公園アパートの庭などがネットワークの網を作ります。屋上のビオトープもその一つですね。街路樹緑のネットワークのために大切ですが、これは車の騒音を和らげるのにも有効です。住民も、緑地が網の目のように広がっていれば、緑を多く感じることができます。

下の地図はカールスルーエ市の中心部です(このページの一番最初の写真と同じ所)。上のほうにカールスルーエ城の森、下のほうに地下水の保護林が大きく広がっています。この大きな二つの森は、特に夏、街の換気のためにも大切な役割を果たします。市街区で温められた空気は上空に逃げて、森から新鮮で涼しい空気が流れ込んで来ます。20数万の人口を持つ中都市にこれだけの緑地があるというのはうらやましいことですね。この地図を見ると緑のネットワークをキーワードにして緑地整備が進められていることがよく分かります。

カールスルーエ市中心部
1.カールスルーエ城(写真)
2.城の後ろに広がる森
3.地下水の保護林
4.アルプ川沿いの緑地
5.ビオトープの公園
6.オイローパハレ(公園)
7.動物園
(C) Karlsruhe Gartenbauamt
左下をアルプ川が4-5-6の方向に流れています。川も大切な緑地を作っていることが分かりますね。赤い線は緑地の整備が計画されているところです。
 

参考となるカールスルーエ市の試み
一部ですが、カールスルーエ市にあるビオトープの例を紹介しました。実にさまざまなビオトープの“かたち”があることが分かったと思います。ビオトープは人間が自然と共に生きて行くための優れた知恵です。でもそこには人間の自分勝手さが映し出されていることも忘れてはいけません。

写真で見てきたビオトープはそれぞれ、どんな植物や動物を呼び戻すかというコンセプトを持っています。もし人が何も手入れをしなければ、例えば草原はいずれ森になります(下の写真を見てください)。でもそれは必ずしも人が望む多様性のある自然ということではなく、草原を好む昆虫などは住めなくなります。
 

これも一つのビオトープ(上の地図 6 )
これは人の手を一切加えていない街の中のビオトープです。面積はテニスコート2面ほど。以前は空き地でした。このようなビオトープも計画的に残されています。
ブッシュ
上のビオトープを近くから撮ったもの。ブッシュが生い茂っていて、とても人は中に入れません(刺があります)。木はまだまばらですが、やがて小さな林になるでしょう。
ビオトープとはすべてを自然に任せるのではなく『自分達の好みに合った自然を身近に造りたい。』という人間のエゴイスティックな動機が基本にあります。人間の希望と都合に合わせた、コントロールした上での自然環境であるわけです。

また、ビオトープを造ったり管理するにはお金がかかるので、すべての計画をすぐに実現できるわけではありません。周辺に住む住民の理解を得られないこともありますが、ビオトープの考え方は広くドイツに受け入れられていて、これからも多くのビオトープが造られるはずです。

それから、カールスルーエ市での例がすぐにそのまま日本に適用できるわけではありません。降雨量や日照量、地形、土壌、動物や植物の種類などが大きく違うので、日本に合ったビオトープを独自に考える必要があります。しかし、自然と人間がどのように共存して生きていけるのか、ドイツのビオトープの試みは日本にとってもたいへん参考になります。

 

 
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ビオトープ見学は、市の公園局の方にお世話になりました。
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